トレーナーズルーム



〜アイシングの効果と重要性〜

 内田 益身 

はじめに

 私は今高校の陸上部のトレーナーをしているがトレーニングの仕方も一昔前と違って多様化し、また質の濃いものとなっている。しかし、トレーニングの質が向上する一方アフターケアの質は昔と変わらないままである。その弊害として少年期の障害が増え若いうちにスポーツを続けることを断念せざるを得ない子も多くなっている。そこで最近見直されてきたのがアイシングである。しかし、アイシングの正しいやり方を知らずただ冷やせばいいと思っている人が多く障害予防はおろか逆に障害を引き起こしてしまうことがある。そこで私はトレーナーとしてしっかり抑えておきたい知識であるアイシングをテーマに述べてみたいと思う。

  

目的と効果

 まず、ここではアイシングの目的と効果を紹介しておこう。

1・急性外傷の直後の応急処置。

  外傷を受けると疼痛、腫脹、炎症、熱感が起きる。これは、血液の循環が阻害され、循環障害や内出血が起きている証拠なのでそのままにしておくと正常な組織まで悪くなってしまう恐れがある。その反応を最小限に抑えるためアイシング。

2・受傷後の急性期におけるリハビリテーションの一環。

 急性期とは、受傷後から72時間以内のことを言い(文献によっては48時間以内ということもある)このときにしっかりアイシングなどの処置を行っておかないと競技に復帰したときに受傷前と同じ動きができない場合や、また同じ個所を怪我してしまう恐れもある。また、受傷後安静で痛みがなくなるまで過ごしたときと急性期を過ぎてすぐクライオキネティクスをしたときでは後者のほうが競技復帰の早いことがわかっている。

3・運動後のアフターケア。

 怪我をしていない選手になぜアイシングをしなければいけないのかと質問されることがある。しかし、多くの競技者はアフターケアとしてのアイシングの重要性をわかっていないのである。そもそも筋肉は怪我をしなくても日々のトレーニングでも多少なりとも損傷し、それによる炎症が起きているのである。これをそのままにしておくと慢性の障害を引き起こしかねないのである。

4・血行増大による自然治癒効果の促進。

 アイシングをすると患部の熱が低くなると言う考え方は間違いではない。しかし、アイシングには冷却効果とはべつに冷却効果の反発反応もある。外傷、障害の部分は血行が悪くなっているのでアイシングをして毛細血管が収縮し体温が低下すると人間の生理的作用として体温を上げようとする。このときアイシングする前より毛細血管が拡張し体温も上がる血液循環がよくなると酸素や栄養の供給が増大し、患部の組織の修復が早くなるのである。


アイシングの種類

アイスバスケット バケツに氷を入れて足を入れる。
アイスバッグ ビニール袋に氷を入れて(水も入れることもある)患部に固定する。
アイスカップ 紙コップに水を入れて凍らせて、じかに患部にあてアイシングする。
コールドスプレー 皮膚を冷却することにより一時的な痛みを抑える効果がある。
深部の内出血や腫れを抑える効果はない。
また、短時間のスプレーでも用意に凍傷を起こしやすい、
冷却効果の反発作用で患部の血行がよくなり痛みが増すこともある。



冷却時間

 いろいろな文献を総合すると15分から30分ぐらいが一番多い。しかしこれは個人差や気温に左右されるので一概には言い切れない。そこで参考にしてほしいのが4つのステージである。

1ステージ 痛い(「ジーン」とくる痛み)

2ステージ 暖かい(短い間だが、「ポッ」とする感じ

3ステージ ピリピリする(針で突かれるような感じ)

4ステージ 感覚がなくなる(寒い冬の日につま先の感覚がなくなる感じ)

この4ステージになれば麻痺が起きている状態なのでアイシングを止める基準となるであろう。

 

アイシングをするにあたっての注意点

 冷凍庫で作る氷は−20℃から−30℃になっている事があるので凍傷を予防するためにアイシングに使用する場合には表面を水でぬらしてからアイシングをするとよいだろう。


おわりに

 今まで知っているようで知らなかったアイシング。アイシングを適切なやり方ですることにより選手の障害予防、リハビリテーションのバリエーションが広がることであろう。ここに述べているアイシングを有効に活用し自身の知識を深めると共に競技者が末永くその競技を続けられるために有効利用していくべきであると私は考えるのである。



       


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